釧路市立芦野保育園

 

背景および概要

 この施設は、児童の健全育成と地域福祉の向上を目標に計画されたモデル事業的な性格をもった公立の保育センターである。一般保育に加え、一時的保育や、障害児保育などの特別保育、子育て家庭に対する相談業務、地域の高齢者との交流など地域に密着した、開かれた多機能施設として、また子育て支援ネットワークの拠点として位置づけられている。釧路ならではの、年間を通じての暖房期間の長さと、その時期の晴天率の高さ、そして高気密高断熱で計画しただけでは、どうしても不足しがちな「換気」を暖房負荷とすることなく可能とする換気システムとしての有効性、そして、時期によっては、そのほとんどを太陽エネルギーによって全館を冷たくない床にできるという「床暖房」的な側面から外気導入式のパッシブソーラーシステムが採用されている。

 

釧路市地域保育センターのソーラーシステム

 延べ床面積約1,000・の施設には、通常延床面積200・程度までの住宅で使われている、100Wタイプのエアーハンドリングボックスを5台と、この施設のために開発された 200Wタイプ3台、合計8台のエアーハンドリングボックスが設備されている。方位の違う3つの屋根毎に棟センサーを持ち適切な集熱を可能にしている。各エリア毎に補助暖房装置としてファンコンベクターを装備しており、補助暖房も、ソーラーの集熱と同じように、床下の蓄熱コンクリートと、床吹き出し口を利用している。

 

サステイナブルポイント・非常時自立運転対応型太陽光発電

 この施設では、アモルファス太陽電池を内蔵したガラス付き集熱パネルを設置している。太陽光発電については、通常は系統を連系していても、非常時には手動による自立運転を可能にして、ライフラインから隔絶されても太陽があれば、最低限のソーラー集熱と換気、そしてTV、ラジオ等による、防災情報の入手を可能にしている。この施設で設置したアモルファス太陽電池を内蔵したガラス付き集熱パネルは、積雪寒冷地における屋根一体型太陽電池施工に向けての提案のひとつである。屋根での空気集熱をより高温にするために設置するガラス付き集熱面は、積雪時においても太陽があれば融雪滑落により雪に覆われることがない。この部分へ太陽電池を敷設し、空気によって熱を取ると同時に太陽光発電をおこなうという使い方で積雪寒冷地での屋根一体型太陽電池の可能性を追求している。一般にアモルファス太陽電池は高温環境下でのアニール効果による能力の回復が知られており、現在計測データを集積中ではあるが、いい感触を得てる。

 

建物名称:釧路市立芦野保育園

竣  工:1996年

建物用途:児童福祉施設(保育園・子育て相談所・総合保育センター)

住  所:北海道釧路市芦野3丁目10番

設  計:(有)木曽三岳奥村設計所+N設計室(永田昌民)

     北海道釧路市住宅建築課

施  工:建築主体 松井・和田・井戸川建設企業