金山町立金山中学校

雪国の学舎に求められた室内環境

金山町は山形の北、秋田との県境に接する人口8,000人ほどの小ぶりな町である。

 一帯は昔から秋田杉と並ぶ良材・金山杉を産する地として知られ、杉の色濃い緑の山々が町の周囲を深々と取り込む。金山中学校はその町のただひとつの中学校である。町の子供たちの全員がこの学校に通い、いま幼い子たちの全員がこの中学校で過ごすことになる。

 金山は冬、雪深い里である。日本海から吹き付ける冷たい湿った風が鳥海山やほかの山々の峰を回り込み、この内陸の盆地状の里にたくさんの雪をもたらす。11月の末には初雪を見、4月に至るまでその後に積もる雪は残る。町の人たちが望んだ木の学校の背景には、杉の里という町の固有の環境に関わるイメージと同時に、こうした厳しい気候性の中にある子供たちの場所を温もりのあるやわらかなものにしたいという強い願いがあった。

 たまたまこの学校の敷地の100mほど南の地点にAMeDASの気象観測点があった。そのデータを分析した結果、この雪深い地にあっても暖房を必要とする期間のほぼ半分ほどは十分に太陽のエネルギーをそのことに期待できることがわかった。その正確なデータなしにはこれに一歩踏み込むことはできなかったであろうし、当初この提案に町のひとたちが半信半疑の思いを抱いたのも当然のことであったろう。公共学校施設の予算の厳しさを覚悟しつつ、それでも町の信頼とかなりなバックアップを得てこの計画は実現した。

 

環境と共生する建築

建築資料研究社1993 益子義弘 抜

 

建物名称:金山町立金山中学校

所  在:山形県金山町

用  途:中学校

竣  工:1992年7月

構  造:校舎 RC造(一部鉄骨造)

     屋内運動場 RC+鉄骨混構造

面  積:敷地面積 46,206.03・

     建築面積 5,018.09・

     延床面積 7,973.02・

設  備:暖房 外気導入式ソーラーシステム

              ファンコイルによる送風床暖房